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この物語はフィクションです。

2010.03.09 Tue




前を走っていたオデッセイが、左のウィンカーを点滅させた。
事前に示し合わせていたサービスエリアではないのに。

その理由は唯一つ。

減速レーンに入り、後に続いていた車は売店の前に止まるが、
そのオデッセイだけは、トイレの前まで走っていく。

車が止まるや否や、文字通り、1人の男が転がり出てくる。
そして、そのまま中へと姿を消した。

そして、同乗していた者がうんざりした顔でこちらへと歩いてくる。



どれほど時間が経っただろう?

皆、思い思いに軽食を食べたり、コーヒーを啜っていると、
ようやく、奴が姿を見せる。

途中、自動販売機の前に立ち止まり、ペットボトルのお茶を不自然に軽快な屈伸をして取り出すと
それを高々と掲げながらこちらに近づいてくる。

その顔は、とても、とても晴れやかだ。

空は曇りだってのに。

そして、突然、誰よりも早く口を開くと、こんなことを言い出したんだ。

「今、おもしろいことがあったんだけど」




車から出たとき、それはまだ若干の余裕があった。

それでも、それがすぐ先にやって来る事は明らかであったから、
巾着の口を力いっぱい締め付け、とにかく急いだ。

ドアが3つ見える。

その真ん中に駆け込もうとして、ドアの枠をつかむとそのまま座り込んでしまいたかった。
しかし、薄れ行く理性のなか、なぜか確認をする。

紙が、無い。

恐らく、その上についている仰々しいプラスチック製の機械を操作すれば出てくるのだろうけれど、
あえて、危険を侵し身を翻す。

1歩、2歩、3歩、果てしなく遠い。

既に、歩きながら緩めてあったから、その身についていたものを同時におろし、同時に、腰をかがめる。

その途中で、限界がやってきた。



全身を貫く痛みが薄れ、腹部にだけに残っている。
たぶん、それもしばらくすれば無くなるだろう。

なぜか、その時、勝利の喜びを感じていた。

俺は勝ったのだ。

I can do it.

ようやく紙に手を伸ばすと、遠くから異様な声がすることに気が付いた。

「ぁー、ぁー」

そして、その声が徐々にこちらへと近づきつつある。

「あー、あー」

と。

少し恐怖感を感じ身を硬くしていると、隣の扉が乱暴に閉まる音と振動を感じた。

刹那、轟きが響き渡る。

「あ~、あ~」

その声に、若干の安堵の色を感じることができるようになった。

そして、なにやら操作する音が。

You can do it.

「アーッ!!」

そして、沈黙。
耳が痛くなるほどだった。
遠くから自動車の走る耳障りなノイズが聞こえるが、その空間は沈黙である。

自分でもなぜそうしたかは分からなかったが、静かに紙を引き出し、処理をしていく。

水が流れる音が、こんなにも大きなものだったなんて、思いもしなかった。

そして鍵が開く耳障りな金属音が、空間に響き渡る。

水を手に受けている時、不自然な咳払いをする。
存在を示すように。

それでも、真ん中の部屋は、空気の流れさえも止まっているようだ。


ようやくその、息が詰まるような(実際に息は絶え絶えだったのだけれど)雰囲気から一歩脱すると
目の前には、大型バスからわらわらと出てくる多くの人たち。

あの、沈黙はいったいいつまで続くのだろう。



そして、1度振り返ると、ペットボトルの蓋を開けて、1口飲んだ。

本当のことかは分からないけれど、上手くお茶を濁されたようだ。


そして、何事もなっかたように道を走る。
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no subject

すごい描写。臨場感さえある。。。(^v^;)
- | ラッキー | URL | 2010.03.10(Wed) 11:44:55 | [EDIT] | top↑ |

no subject

ラッキーさん、コメントありがとうございます。
おけらです(´・ω・`)

こんな、恥ずかしい文章を読んでいただき、恐縮です。
そしてこのことは御内密に・・・w
- | おけら | URL | 2010.03.11(Thu) 21:29:34 | [EDIT] | top↑ |

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